2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故。
原子力災害による未曽有の被害は、社会の根底的な価値観さえ揺るがすものでした。
先祖代々守り続けてきた大地。
どこにも負けないくらい豊かな海。
暮らしに根付いた文化。日々の暮らし。
そうしたものへの、ささやかな信頼と誇り。
様々な、形あるもの、ないものが壊され、失われました。
何が被害を深刻化させたのか。
私たちは何を失い、何に気づき、何を取り戻さねばならないのか。命の営みにとって本当に大切なものは何か。
それを二度と失わないようにするために、どのような社会にしていけばよいのか。
そうした一つひとつの問いに、向き合える場所をつくりたい――
そのような思いから、いわき湯本の旅館『古滝屋』の9階の一室に、
「原子力災害」を「考証」する展示ルームを設けることにいたしました。
構想のヒントになったのは日本四大公害水俣病の
民間のアーカイブ施設である「水俣病歴史考証館」や、
成田闘争のアーカイブ施設である「空と大地の歴史館」など。
どちらも、「賛成/反対」という立場を超えて学び考える事のできる貴重な施設です。
未曽有の被害をもたらした原子力災害についても、被害の全容と構造的背景、
被害の克服に向けた様々な取組を記録する施設が必要だと考えました。
震災から10年の節目に、国は、福島県双葉郡に「東日本大震災・原子力災害伝承館」を建設し、震災の風化を防ぐための情報発信を行うとともに防災・減災に役立てるとしています。
一方、原子力災害考証館では、
災害の被害・原因・解決のための取組を体系的に整理しながら、草の根の人びとが取り組んできた軌跡(測定、対話、伝承、裁判、人材育成 等)や、原子力政策が有する課題、などを幅広く扱う予定です。
一人ひとりが、問いに向き合い、答えを見出していく
そして、これからどんな生き方や社会を目指していくのかを考え、行動する
「原子力災害考証館」を、そんな場にして行きたいと考えています。