公害の概要
香川県豊島(てしま)は、小豆島西約3.7kmに位置する周囲約20kmの離島です。
島西端の瀬戸内海国立公園内で土砂採取をしていた業者が、1975年に有害産業廃棄物処理の許可申請をしました。住民は反対運動や裁判を起こしましたが、知事がみみず養殖のための無害物の扱いを許可し、業者は操業後すぐ無許可の産業廃棄物持ち込みを始めました。その結果、1970年代後半から1990年にかけて日本最大規模の有害産業廃棄物が不法投棄されました。
持ち込まれた産業廃棄物は、自動車廃プラスチック類のシュレッダーダスト等でした。不法投棄が大規模化した1980年代には連日、野焼きの黒煙が立ち上り、住民は咳が止まらない健康被害が発生しました。喘息様の症状を持つ生徒・児童は、全国平均10倍近くになりました。
1990年11月、兵庫県警の強制捜査により廃棄物搬入は止まりましたが、膨大な量の廃棄物が放置され、有害物質を含む水が海に流出しました。また事件報道による風評被害で豊島産の産物、観光業が壊滅的影響を受けました。
豊島住民は廃棄物撤去のため1993年11月に香川県と業者、排出事業者等を相手取った公害調停を国に申請し、世論の理解と支援を得るため住民運動を展開しました。
2000年6月に知事が謝罪し、調停成立。廃棄物と汚染土壌の搬出、直島での中間処理が2017年まで実施され、2021年4月現在、汚染された地下水の浄化作業中です。
この資料館だからこそ学べる特徴
「豊島(てしま)のこころ資料館」は、豊島が「ごみの島」でなく「学びの島」として再生し、大量生産・大量消費・大量廃棄時代を象徴する有害産業廃棄物不法投棄事件の経緯と教訓を後世に伝えるため、住民手作りの資料館として2002年に開館しました。建物は不法投棄を起こした業者の元事務所で、現場内にあり、住民による現場見学の際に訪問します。
歴史の証人としての不法投棄された産業廃棄物の剥ぎ取り標本をはじめ、住民運動の資料や年表、写真パネル等の展示があります。